技術士総合技術監理部門の概要

技術士の総合技術監理部門は理工系最高峰の技術者資格である技術士の中でも最高の資格と言われますが、具体的にどのような資格なのか。実はあなたもよくご存じでないかもしれません。

このページでは、技術士総合技術監理部門の難易度や受験資格、合否判定基準や合格のメリットなどの概要について解説していきます。

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​1 総合技術監理部門とは

総合技術監理部門とは

技術士の総合技術監理部門とは、一言で言うと、技術業務の全般をマネジメントする能力、つまり技術者の業務管理能力に関する資格です。

もう少しわかりやすく述べると、技術士総合技術監理部門とは、

『技術業務を首尾よく完了させるために、幅広い管理技術を適用しながら業務上の様々な問題をうまく解決していき、当初の目的を達成する能力を表す資格』

ということになります。

ここで、『幅広い管理技術』と述べましたが、これは技術業務のプロジェクト責任者である技術士が、業務を遂行していく中で遭遇するコスト、時間、人間関係などに関する様々な問題を解決するため、技術的側面の他に必要となる以下の各分野における様々な管理技術のことを指します。

  • 経済性管理

  • 人的資源管理

  • 情報管理

  • 安全性管理

  • 社会環境管理

これらが、総合技術監理部門でよく言われる『5つの管理』です。

総合技術監理部門の技術士は、技術業務をこうした幅広い観点から不断に管理をしながら、仮にトラブルが発生しても、より良い解決策について論理的に検討し、そしてトラブルの解決に導かなくてはなりません。

 

このとき、トラブルがトレードオフ、すなわち、二律背反で明快な解決策が無い複雑なものであっても、ベターと言える解決方法を粘り強く考えて、問題を解決に近づける必要があります。

 

​このような総合技術監理部門の試験に合格するには、その他の技術部門の技術士として業務ただ淡々とこなしていくだけではなく、『5つの管理』に代表される総合技術監理に関する多くの知識や技術を習得して、論理的思考に基づいた問題解決能力を養い、さらにその実績を積んでいくことが必要になります。

 

​2 総合技術監理部門の合格率と難易度

総合技術監理部門の合格率と難易度

​2-1 総合技術監理部門の合格率

近年の技術士総合技術監理部門の合格率は、次の図表のとおりです。

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この図表によると、総合技術監理部門の受験申込者数や受験者数は、年々、徐々に減っていく傾向にあります。ただ、その傾向とは無関係に、対受験者合格率は年によって変動はありながらもほぼ20%を下回り続けています。

​2-2 総合技術監理部門の難易度

総合技術監理部門の合格率だけを見ると、建設部門や電気電子部門のようなその他の技術部門とさほど変わりはない、と思ってしまうかもしれません。

しかし、総合技術監理部門の受験申込者のほとんどは技術士資格保有者です。

 

そのことを併せて考えると、総合技術監理部門の試験は、すでに技術士として国から一定の実力が認められている受験者を、そこからさらに1/5以上に絞り込んでいくという、かなりの狭き門だと言えます。

 

では、なぜこのように技術士である受験者が不合格となってしまうのかというと、対象とする事象、問われている資質がその他の技術部門とは異なるためでしょう。

建設部門などの技術士として、工学的に優れた技術力によって技術的な問題の解決を図ろうとするだけでは、総合技術監理部門の技術士としては不十分だ、ということです。

工学的見地から技術上の問題は解決できたとしても、業務上発生する問題は、技術的なものだけではありません。

1つの技術業務を完遂するためには、技術力以外の業務管理能力を発揮して、技術的な問題以外の様々な問題についても解決を図っていく必要があるのです。

 

もう少しわかりやすく説明しましょう。

あなたも経験があるでしょうが、技術者として業務を進めていくと、納期やコストに頭を悩ませることが度々あります。

一般的に、その業務に費やす時間や経費が多ければ、技術的なクオリティは上がります。

しかし、多くの技術業務に潤沢な時間や経費は用意されておらず、一方で業務の対象となっている事象は複雑さを増しており、顧客から求められる成果のクオリティは年々、高まるばかりです。

このような中で、技術者が技術業務に対し所定の成果を上げるためには、当然、技術力以外の別の管理能力が必要になるのです。

このように、総合技術監理部門の技術士には技術力以外の資質も求められるため、技術愛好家であるいわゆる「技術屋」にとってこの総合技術監理部門は合格が極めて難しい資格といえるでしょう。

 

​3 総合技術監理部門の受験資格

総合技術監理部門の受験資格

総合技術監理部門の受験資格は、以下の通りです。

既に総合技術監理部門を除くいずれかの技術部門の第二次試験に合格している者が、総合技術監理部門を既に合格している技術部門に対応する選択科目で受験する場合は、試験科目のうち選択科目を免除する。

技術士補となる資格を有し、次のいずれかに該当する者

(1)技術士補として技術士を補助したことがある者で、その補助した期間が通算して次に定める期間(⑵の期間を算入することができる。)を超える者                         ① 総合技術監理部門を除く技術部門 4年

    ② 総合技術監理部門 7年

(2)科学技術(人文科学のみに係るものを除く。)に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価(補助的業務を除く。)又はこれらに関する指導の業務を行う者の監督の下に当該業務に従事した者で、その従事した期間が技術士補となる資格を有した後通算して次に定める期間(⑴の期間を算入することができる。)を超える者。

    ① 総合技術監理部門を除く技術部門 4年

    ② 総合技術監理部門 7年

(3)科学技術(人文科学のみに係るものを除く。)に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価(補助的業務を除く。)又はこれらに関する指導の業務に従事した期間が通算して次に定める期間を超える者。 

    ① 総合技術監理部門を除く技術部門 4年

    ② 総合技術監理部門 10年

 (既に総合技術監理部門以外の技術部門について技術士となる資格を有する者にあっては7年)

  

なお、⑴~⑶のいずれにおいても学校教育法による大学院修士課程(理科系統のものに限る。)若しくは専門職学位課程(理科系統のものに限る。)を修了し、又は博士課程(理科系統のものに限る。)に在学し、若しくは在学していた者にあっては、2年を限度として、当該期間からその在学した期間を減じた期間とする。

出典:日本技術士会HP 「令和3年度 技術士第二次試験の実施について」より抜粋

ここに示すように、総合技術監理部門を受験するには、まず技術士補である必要があり、さらに(1)~(3)のいずれかに示される経験年数が無くてはなりません。

ただ、総合技術監理部門の受験資格は、その他の技術部門の二次試験と求められる経験年数が変わるのみで、そのほかに違いはありません。

実際には、(1)~(3)の条件を踏まえてすでにその他の技術部門の技術士に合格している技術者がほとんどを占めています。

 

総合技術監理部門を意識するくらいの業務経験を持つ年代であれば、通常は、技術士としてすでに一定の経験値を持ち、後輩技術者に対して指導的立場で様々な教育や管理を行っていてもおかしくはありません。

また、立場として企業や官庁の幹部にある場合も多く、技術業務の管理だけでなく組織としての管理にも責任があるでしょう。

そのような年代、立場の技術者であればまさに総合技術監理部門の受験適齢期と言えるでしょう。

 

もっとも、新進技術者として早くして技術士になり、業務管理の経験は少なくても、前述のような『5つの管理』に代表される総合技術監理に関する多くの知識や技術を習得することや論理的思考に基づいた問題解決能力を早いうちから養うことは、極めて有意義と言えるでしょう。

なぜなら、総合技術監理部門に合格すると、しばらくして企業や官庁の幹部としてより大きな責任を持つ可能性が高くなるからです。

 

​4 総合技術監理部門の選択科目・必須科目と合否判定基準

総合技術監理部門の選択科目・必須科目と合否判定基準

​4-1 総合技術監理部門の選択科目

総合技術監理部門の試験は、その他の技術部門と同様に選択科目と必須科目について実施されます。

しかし、このうちの選択科目は、以下にある通り、すでに技術士となっている技術者が受験する場合、免除されることになっています。

既に総合技術監理部門を除くいずれかの技術部門の第二次試験に合格している者が、総合技術監理部門を既に合格している技術部門に対応する選択科目で受験する場合は、試験科目のうち選択科目を免除する。

出典:日本技術士会HP 「令和3年度 技術士第二次試験の実施について」より抜粋

先ほど述べた通り、総合技術監理部門の受験者はほとんどがすでにその他の技術部門の技術士ですが、例年、ごく少数ですが、その他の技術部門と総合技術監理部門を併願する受験者もいます。

総合技術監理部門の選択科目とは、こうした併願受験者が受験する場合に必要となるものであり、あなたがすでに技術士である場合、選択科目はありません。

 

技術士二次試験は、例年、7月中旬の土、日曜日に実施されます。

このうちの土曜日は総合技術監理部門の必須科目のみが実施される日で、翌日の日曜日に実施される選択科目はその他の技術部門の選択科目として、総合技術監理部門の選択科目も兼ねて実施されます。

​4-2 総合技術監理部門の必須科目

総合技術監理部門の必須科目は、択一式と記述式で実施されます。

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このように、総合技術監理部門の筆記試験は、まず午前中に択一式が2時間、5者択一の設問が40題出題されます。

そして、昼休憩をはさんだ午後には記述式問題が、24×25の500字答案用紙5枚、すなわち合計2500文字の論述として実施されます。

午前の択一式ですでに2時間も集中した後、昼休憩は挟みながら、さらに難解な記述式試験に3時間30分もの時間を耐えるわけですから、相当なスタミナが必要なことは明白です。

 

午前の択一式は、後述する通り設問の難易度は以前よりも上がっており、正しく解答するのは難しくなっていると考えられます。ただ、まだスタミナがあるので冷静に対応できることでしょう。

しかし、午後の記述式問題はその他の技術部門にはない独特な難解さがあるため、午前中の疲れも相まって途中で集中力が途切れてしまい、着実に得点できなくなる受験者が多いのが実態です。

 

したがって、択一式、記述式ともに、それぞれの特徴に即した適切な勉強方法を知り、事前に十分な勉強を済ませ、しかも実際の現場でその成果を発揮するための入念な準備も必要になります。

​4-3 総合技術監理部門の合否判定基準

択一式、記述式の問題の合否判定基準は、以下の通りです。

総合技術監理部門の合否判定基準.png

この表にあるとおり、記述式問題は、択一式と記述式の合計に対し60%の得点をするのが合否の分かれ目となります。

択一式も記述式もいずれも50点満点とされているため、両方で合計100点満点のうち60点を取ることが必要になるということです。

この点は重要です。

択一式で得点を稼げばその分記述式の負担が少なくなる、またその逆もある、ということなので、そのことを踏まえた勉強時間の配分が必要になります。

ただし、いわゆる「足切り」については合否判定の基準上はありませんが、即座に結果が出る択一式の得点があまりにも低い場合、都合上、記述式の答案が採点されないケースが十分に考えられることにも注意が必要です。

 

​5 総合技術監理部門合格のメリットと年収

チームミーティング

総合技術監理部門に合格した場合のメリットとして、合格と同時に職位が上がって、同時に給料が増えて年収増になるなどといった即効性のあるメリットは、あまり期待しない方が良いでしょう。

せいぜい、名刺に“技術士(総合技術監理部門)”と刷れるぐらいのもの、といっても過言ではないかもしれません。

技術系資格の最高峰をなす技術士資格の、さらにその最上級のこの総合技術監理部門の資格を取得しても待遇があまり変わらないというのは、一見不合理なことのように思えます。

しかし、あなたの顧客の立場から考えれば、それも仕方がありません。

あなたの顧客、すなわちあなたの会社に業務を委託している立場からすれば、あなたが総合技術監理部門の技術士であろうがなかろうが、あまり関係はありません。

5つの管理に関することや「リスク管理」「トレードオフの課題解決」といったところで、委託者からすれば、それは受託者側がうまく対処すべきものに過ぎません。

したがって、受託側が“総合技術監理”をクローズアップしてそれに対する対価を支払うなどという発想にはなり得ないのは自然でしょう。

おのずと、あなたの会社も、あなたが総監技術士であってもそれによって業務の受託金額が増えるわけではない以上は待遇を良くしようがない、ということになります。

 

これでは、総合技術監理部門を受験する意欲を削がれてしまうかもしれません。

ただ、総合技術監理部門の技術士になるということは、業務の技術的な問題以外の様々な問題を解決できるだけではなく、組織としての様々な問題にも取り組める資質があることが国から認められるということです。

 

そのように考えると、総合技術監理部門の試験はある意味、「幹部候補生の選抜試験」と言っても過言ではありません。

それまでの、各技術部門の技術士であれば、与えられた業務をただ淡々とこなせば評価されるのですが、総合技術監理部門に合格した技術士は、組織の幹部候補生としていずれは組織そのものをマネジメントしていく立場に変わっていくことでしょう​。

 

そのような流れに乗れば、年収という形で総合技術監理部門のメリットが享受された、と言えます。

 

観念的な表現になりますが、技術士二次試験に合格して「人に使われる立場から人を使う立場へ」と変化が訪れた後、この総合技術監理部門の合格を境に、さらに「組織をマネジメントする立場」へと、再びスケールの大きな変化があなたの中で巻き起こるのです。

​こうした技術士としての大きな変化の醍醐味を味わうためには、総合技術監理部門の試験に早めに合格する必要があります。