
総合技術監理部門試験対策その1
業務経験を「5つの管理」の観点から分析する
あなたが総合技術監理部門の技術士を目指す以上、「5つの管理技術」を理解しているのは前提でしかありません。問われるのは、それらを駆使して、現場で実際にどのように問題解決を行ったか、なのです。
首尾よく業務を完了させることが総監技術士の生命線
おそらく既に建設部門や電気電子部門などといった各技術部門の技術士であろうあなたが、これから総合技術監理部門の試験を受験するにあたって、
「総合技術監理部門の試験では、いったいどのような資質が問われるのか?」
ということをあらかじめ整理しておくのは、きわめて重要です。
つまり、トレーニングを開始する前に、ハードルの位置とその高さを調べておくことによって、より効率的に学習を進められるからです。
これについて、日本技術士会のウェブページに、技術士総合技術監理部門について以下のような記述があります。

ここにある通り、総合技術監理部門は、他の技術士二次試験と同様、選択科目と必須科目に分かれています。
ただし、受験者がすでに技術士なので、選択科目については、実際にはほとんどの多くの方が免除になっています。
ところで、“総合技術監理”などという名前をきくと、とてもとっつきにくい技術、とあなたは感じてしまうかもしれません。
したがって、このような総合技術監理部門をわかりやすく表現すると、
「プロジェクトを首尾よく完了するために、途中で起こる様々な障害に対して、5つの管理技術を適用しながら解決していき、そして当初の目的を達成する技術」
という表現になる、と私は考えています。
言い換えると、総合技術監理部門という資格は社会的、技術的な観点からバランス感覚のある技術者に与えられるもの、となりましょう。
あなたが既に取得している各技術部門の技術士資格は、その技術部門において「工学的な観点から深く広い専門知識にもとづいた問題解決技術力がある」ということを証明するものになります。
しかし、その技術を実際に適用する場合、なかなか机上の計算どおりに進まないことは、あなたもご承知でしょう。
実際に工学的な技術を用いて実際の業務を遂行していくにあたっては、単なる技術的課題のほかに
「いかに経済的に済ませるか」
「環境への負荷をいかに減らすか」
「どのように安全を確保するか」
「いかに人間関係を円滑にしていくか」
といった様々な制約条件に注意を払う必要が生じるのです。
そのような様々な現場特有の各種条件を背負いながら、既に技術士として担保されている工学的な技術力をあなたは発揮する必要があるのです。
実社会に厳然と存在する様々な障害の中で、業務上のトレードオフの問題をバランスよく解決していき、所定の目的を達成しようとするかが、総合技術監理の視点を持つ技術者かどうかの評価の分かれ目なのです。
つまり、どんな問題が起こったとしても、そこから逃げず、最終的に首尾よく業務を完了させることが、総監技術士の生命線なのです。
さらに、それをあなたの実績にもとづいて示す必要があるのです。
理解しているだけではダメなのです。
by ビジネスマン自立実践会
技術士合格の仕組み講座
技術士総合技術監理部門 合格の意義
総合技術監理部門の試験に合格するには、技術士として忙しくしているあなたに、さらに時間的、体力的な負担をかけなければなりません。
では、そこまでして総合技術監理部門に合格することに、一体どれだけの意味があるのでしょうか。
1 総合技術監理部門試験に合格する意義

総合技術監理部門の受験で学ぶあらゆる観点や知識は、本来非常に重要なものであるのにも係らず、我が国ではこれまで比較的軽視されてきたきらいがあります。
技術者は“技術力”が命である、とばかりに、常に技術を考え、技術を語り、技術力の拡充に心血を注いでいくことこそ、技術者としてあるべき道であるという考え方が支配的でした。
実際、このような観念に洗脳されたステレオタイプの技術者が、現場には溢れかえっています。
しかし、果たして技術者は技術のことだけ考えていれば良いのでしょうか・・・。
その答えは、各技術分野の最上位分野として、この総合技術監理部門が設立されたことにあるでしょう。
これは、技術者をとりまく時代が次のように大きくシフトチェンジしたことを意味します。
これからの時代における我々の工学的技術は、大いなる自然の中に抱かれている人間の社会が、調和を保ちながら持続的に発展していくために存在するものでなければなりません。
その観点からすると、我々技術者の判断や行動の大方向は、このような“大いなる自然”や“人間の社会”における利益を損ねる方向に向けられるようなことがあってはならないと言えるでしょう。
人とのつながり、自然環境の大切さ、節約・・・。これらは総合技術監理の土台をなす“5つの管理”として位置付けられています。
ステレオタイプの技術者には欠落しがちなこのような観点を、新たに学び習得することによって、あなたは技術者としての階段を一つ、上がることになるのです。
そもそも、技術者であろうと何だろうと、今、この時代に生きている者として、自然環境の保全、社会の安定、健全な繁栄に貢献することは、永続的な人類の繁栄という歴史的観点から考えて、大きな責務と言えます。
すこし高尚な言い回しになってしましたが、あなたが総合技術監理部門に合格して、普通の技術者より上位のステージに身を置くということは、いろいろな意味で深く、大きな意義があるのは間違いありません。
ただ、残念ながら、企業などの組織においては、未だこのような長期的かつ社会的な観点からこの資格を評価することは実現していません。
企業としての価値観を同じようにシフトチェンジするには、もう一つ時代を経なければならないでしょう。
しかし、何もあなたまでそのような遅いスピードに合わせることはありません。
所属する組織や生きる時代を新たな次元に導く気概を、あなたのような人こそ、持たねばならないでしょう。
2 総合技術監理部門試験に一発合格すべき理由

では、総合技術監理部門技術士の称号を手にすることで、いったいあなた自身の何がどう変わるのでしょうか。
さきほど名刺の例えを使ったが、あなたの外見として変わるのは本当にそのくらいかもしれません。しかし、内実においては、この取得前後で非常に大きな相違をあなたは感じることになるでしょう。
それは、ひとつの歴史が終わり新しい歴史が始まっていくという、あなた自身が進化したという実感です。
これは、
“私はもうこれまでの自分とは違うんだ・・・”
“他の普通の技術者とも違うんだ・・・”
“私はもう、単なる技術者ではないんだ・・・”
という、あなた自身の、技術者としての、ひいては人間としての覚醒ともいえます。
もっと簡単に言うと、総合技術監理部門の資格取得によって、あなたの意識の中で、技術者としての様々な劣等感が一掃されてしまい、自分はむしろ“リードする側に立つ技術者”なのだ、という自尊心を持つことができるのです。
言い方を変えると、一種の“うぬぼれ”です。
“うぬぼれ”という言葉の響きは悪いですが、あなたの余計な劣等感を一掃し前向きな推進力を与えるためには必要不可欠なファクターです。
もっとも、それは合格した本人の思い込みであり、総合技術監理部門に合格したからと言って世間はあなたをそのように再認識することはありません。
それほどの影響力は、まだこの資格にはありません。
ただ、あなた自身の内側で一つの大きなうねりが生じて、その衝撃であなた自身の基本的なものの見方、考え方のベクトルが、強引に根っ子から変えられてしまうことに、あなた自身は気が付くでしょう。これこそ、進化と言えます。
これは非常に魅力的なことです。
しかも、年齢を重ねれば重ねるほど、その転換の価値は高いと言えるでしょう。
というのは、多くの人は年齢を重ねるごとに自分自身を変えていくことが困難になり、そしていずれはすべてを諦めてしまうからです。
このように、一見価値もないと思われがちな総合技術監理部門の合格には、実は“あなた自身”を根本から変えてしまう甚大な力が宿っています。
健康でいられる時間が有限である以上、成長は一日でも早いほうが良いはずです。
だから、「数年のうちに・・・」などと勿体ないことを言わず、ぜひ一発で合格していただきたいのです。
3 総合技術監理部門技術士と「マネジメント」

総合技術監理部門の試験に合格することは、いわゆる“ダメ技術者”にとって起死回生の一打にもなりうるのです。
というのは、人々からリスペクトを受けだすようになるからです。
“ダメ技術者”の反対の“優れた技術者”というのは、一義的にその専門分野の「優れた技術力」をもつ技術者であるとされています。
しかし、あなたの身の回りを見渡してみてください。優れた技術者だとしても、必ずしも人間的にリスペクトできる人ばかりではないはずです。
技術力は、技術者として無くてはならない重要な素養ですが、それ一本で、人を率い、社会の複雑な問題を解きほぐす切り札にはなり得ません。
良い選手がそのまま良い監督になるわけではないように、人を率いてより大きな仕事をする立場の人には、“マネジメント”という別の技能が必要になります。
その“マネジメント”の中心は“コミュニケーション能力”です。
コミュニケーション能力とは、相手の立場や考えを理解し、自分の考えを相手に伝え、自分だけではなく相手の頭脳も働かせながら、自分の意見さらには相手の意見を研ぎ澄ましていく、そんな能力です。
このような能力を持つには、“ダメ技術者”のように、自分のできない、知らないことに対して畏敬の念を感じる謙虚さがなければなりません。
実は、この謙虚さこそが、人々のリスペクトを生んでいく源泉なのです。
優れた技術者でありながら人の敬意を受けない人は、このコミュニケーション能力が欠如していることが多いものです。
自分の腕に自信があり過ぎるがために、どうしても見方が一方的になってしまうのでしょう。
このように、技術者としての力量が不足していると痛感している人が、謙虚さという武器を得て、“優れた技術者”との差を埋め、そして追い越していくときに、この総合技術監理部門技術士というのは格好の通行手形となるでしょう。
この、成長プロセスを抜け出すのに数年も要してしまう人が多いようです。
でも、もっともだろう。謙虚になる、すなわち価値観を増やすということは、決してたやすいことではありません。
なぜなら、完成したと思っていた自分を破壊しなければならないという点で非常に難しく、できない人には一生をかけてもできない作業だからです。